いいかげん目覚めなさい(天海祐希の声)

ベートーヴェンを聴きながら、ブログを書きはじめる。ソニーのヘッドホンから流れてくるのは、インマゼール指揮、アニマ・エテルナ演奏のシンフォニー第6番田園である。

大学時代のひと頃、Apple Music でクラシックを聴き漁っていたことがあり、ネットで名盤紹介を見つけては検索して聴き比べていた。特にモーツァルトを聴き比べていて、その次に聴き比べていたのがベートーヴェンである。

側頭葉に格納された大学時代の風景には、淡いモヤがかかっている。ランチでにぎわう戸山キャンパスの文カフェでは、フレッシュな若者がより集まって華やかな青春の香りを散らしていた。「大学時代」を思い起こすと、喉の奥に魚の骨がひっかかるような曰く言い難い気持ちになる。

シンフォニーの景色は勇ましい。リズムの区切りが明快で世界の輪郭がはっきりしている。電撃をくぐりぬけて大海原を突き進む船に乗っているみたいだ。天から降り注ぐ光が一面の田園を祝福しているみたいだ。

大学時代は理想的なキャンパス・ライフを謳歌できなかった。ひとりで鬱々と授業を受けて、バイトもせずに、ダラダラと本を読んで、ブログを書いていた。恋人のひとりも出来ずに寂しく戸山公園を散歩していた。こう書くとただの「ぼっち」であるが、それでも真剣に生きているつもりだった。ハイデガーやヤスパースの著作を読み、自らの「本来性」や「実存」に耳を傾けようとしていた。毎日 iPhone にメモを書いて己の胸に問いかけていた。何をなすべきなのか? 結論を出して実行する技術とパワーは足りなかったかもしれない。でも真剣だった。

あれから数年が経つ。わたしは真剣に生きているだろうか? 人の役に立つことをしているだろうか? ゾンビのように同じことを繰り返して何となく生きていないか?

日常に取り込まれてウトウトしている魂を揺り起こすために、ブログを立ち上げた。

明日になれば、「いつもの」日常が再起動する。会社組織の催眠術にかかってはいけない。ゼンマイ人形みたいな大人になっちゃだめだ。わたしの日々を取り戻すんだ。